環境問題のウソ 池田清彦

環境問題のウソ
環境問題のウソ
posted with amazlet on 06.03.15
池田 清彦
筑摩書房 (2006/02)

池田センセイが聖域を斬る

イデオロギーという正しさを追及する古典的論争がほとんどなくなった現在、環境問題を批判する事は、神聖犯すべからず領域であろう。その聖域に本業の構造主義生物学から出発し、科学批評とリバタリズムの毒舌軽妙なエッセイ活動に熱心な池田清彦先生が斬りこんだ一冊である。

本書で池田センセイが展開している環境問題の常識への批判の根拠は、池田氏のオリジナルな研究ではなく、さまざまなデータを引用して、コンパクトに批判をまとめあげている点と、世間や体制への反骨心と斜めに構えた毒舌が池田氏ならでは一冊になっている。

具体的な内容としては、地球の気温上昇とその原因とされるCo2の人為による増加という環境問題の常識から、さまざまな公のデータを引用して、平たく否定している。さらにはダイオキシンの体内摂取は圧倒的に、過去に散布された農薬による食物によること、生物の外来種の侵入が生態系の破壊させるという論理及びそれらをうのみにした立法の廃止を主張している。

物事が科学的な事象であるほど、検証データ、真理は1つ、絶対的正しさに立脚した「反環境問題」に、レビュアーを含む素人の読者には理解できない専門家からの否定論も強いことは予想できる。科学の答えは1つという前提ゆえ、人文系の論争よりも、譲れない、科学のパラドックスであろう。

レビュアーにも、個々の反証データが正確なものなのかはわからないし、他の著者の本であったならば、手にする事もなかったろう。科学のもつ反証可能性というオープン性だけが、議論を健全にさせると思う。

本書で引用されているデータにはインターネットで公開されているものも、多く、ブログで紹介するには適していると思われ、いくつか引用してレビューはここまでとしたい。あとは、興味ある読者に、おまかせ。

地球温暖化の証拠としての世界平均気温の変移の最も有名なデータ
■世界
http://data.giss.nasa.gov/gistemp/graphs/
■東京
http://data.giss.nasa.gov/cgi-bin/gistemp/gistemp_station.pyid=210476620003&data_set=1&num_neighbors=1

■反論データ:気象衛星NOAAが測った対流圏の気温(下記URLの最下部グラフ)
http://www.john-daly.com/

思うに、公害や過剰な消費という実感できる等身大のうしろめたさが、マクロな環境問題を提示されると、素直な反省を導き、素朴な市民のメンタリティが環境問題を支持しているのではあるまいか。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる 梅田 望夫

シリコンバレー神話の実話としての希望

著者の梅田氏はシリコンバレーの全盛期から、現地にてベンチャー起業家、エンジェルなるベンチャーファンドが集まり、インターネットを中心としたIT技術革新と事業創造のダイナミズムをウォッチしてきたコンサルタントである。珠玉混合のベンチャ企業と技術専門家の彼等に投資し、MBAホルダーの経営専門家や会計その他の専門家を契約雇用してバーチャルな会社を形成するコーディネーターが著者等のコンサル業者の役割である。その仕事の日常は前著や本書の中で、リアルに記述され、シリコンバレーの熱気が肌で伝わってくる。

本書で梅田氏の主張するWeb進化論としての次世代Web2.0とは、まだ、定義も明確になったものではないが、具体的な実現例としては、まさに実用化しているブログであり、はてなダイアリー等に代表されるネット上の情報を収集して、ネット上の辞書としてアーカイブであり、このブログでも利用しているAmazon社の提供する商品の紹介のサービスインターフェースであったりする、ネット技術の動向に興味を持つ読者には、身近な技術の延長にあるものである。

本書は、技術専門書ではないし、著者も、技術者ではないから、その技術的解説に期待する読者には物足りない側面もあろう。著者としては、シリコンバレーの起業のダイナミズムやWeb進化の動きを、「総表現社会」や「チープ革命」などといったオリジナルの造語で説明し、次に来る波を、評論家のような論考の展開を行っている。

論考に関しては、いささかぎごちない読感を感じ、それは、かつて坂村氏がトロンを提唱したときの、論考に似たもの足りなさも感じた。現地を知らない読者に与えるシリコンバレー神話が、いささか説得力に欠けた論考と確かな事実に基づくレポートといった感じで、おぼろげない期待と錯覚のはざまを感じる。

蛇足ながら、科学技術評論に興味のある読者には、池田清彦氏や西垣通氏の著作をお奨めしたい。

本書の評論に関しては議論のあるところと思うが、長年、現地でシリコンバレーを見てきた証言としての最先端技術とその事業化に関しての一言は、著者にしのぐところはないというのは間違いないだろう。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


| | Comments (0) | TrackBack (4)

資本主義と科学の自己増殖性 科学はどこまでいくのか

科学はどこまでいくのか
池田 清彦
筑摩書房 (1995/03)
売り上げランキング: 62,086
おすすめ度の平均: 5
5 最良の科学史の教科書

科学と資本主義の自己増殖

池田先生による本書は、古代、ギリシア、スコラ哲学、ルネサンスと真理と追及する科学の「物話」としての虚構性を、得意の池田節で根源的かつ平易に説き明かしている。ちくまプライマリーブックスという、地道かつ良書の一冊であるが、その題名と同シリーズからは予想できないほどの、ラジカルな内容に始終している。

レビューとしては例外的に、むすびの中から、こんな文章を引用して、資本主義と科学技術の結託による現代社会の病理を具体的に紹介したい。

”...欲望のキャナライゼーションを賦活する装置は、もちろん資本主義と科学技術である。人々の欲望が資本主義と科学技術を駆動するのと同時に、資本主義と科学技術もまた、新製品いかにすばらしいかという宣伝活動を行い、人々の欲望を刺激する。
 可視的な政治権力もまた、人々の欲望を科学技術文明に順応させるように働くだろう。可視的な政治権力は、人々の欲望、資本、科学技術、そして己自身が相関する権力作用の収斂点である。従って、この権力作用システム総体が安定的に運動してないと、政治権力も不安定になって崩壊する恐れが強い。...政治権力もまた、あらゆる組織と同様に、自己保存と自己増殖を目標とするから、権力作用システム総体の安定性を指向するように動く。すなわち、科学技術に対しては、資源を投入し続け、人々に対しては、新技術がいかにすばらしいかといった言説を流す。...”

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

天才 堀越二郎  零式戦闘機

零式戦闘機
零式戦闘機
posted with amazlet at 05.07.12
柳田 邦男
文藝春秋 (1980/01)
売り上げランキング: 162,824

天才 堀越二郎 

ノンフィクション作家柳田氏の扱うジャンルは多岐にわたるが、本書が一番のお奨めである。零戦設計の天才 堀越二郎氏の技術者の熱意に手に汗握るノンフィクションである。大東亜戦争での米国との物量の差は戦闘機の設計にも影響した。パワフルなエンジン搭載のグラマンに対して、軽量化のため翼に穴をあけてまでぎりぎりの設計の零戦。平均的な能力のパイロットが安全に操縦できる米国機に対して、燃料タンクの防御性は弱く、技量あるパイロットが乗りこなす零戦。戦争の間も続く戦闘機の開発のせめぎあい。

本書に興味を持たれた読者は柳田氏の零戦ものを続けて読まれるとよいだろう。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

フリーマン・ダイソン科学の未来を語る

フリーマン・ダイソン科学の未来を語る
フリーマン・ダイソン はやし はじめ はやし まさる
三田出版会 (1999/03)
売り上げランキング: 696,853

科学は想像力である

寺山修司の遺した言葉に”どんな鳥でも想像力より高く飛べないだろう”というアフォリズムがある。フリーマン・ダイソン博士は繰りこみ理論を発見した物理学者であるが、20世紀最大の飛びぬけた想像力の科学者である。

レビュアーは科学の進歩については池田清彦氏の論考に賛同するが、ダイソン博士の遺伝子工学や宇宙工学などの科学的根拠をベースにし、地球から宇宙へ広がっていく生命を描くスケールと未来への想像力は科学する心の源泉のすばらしさを読者に伝えてくれる。

ダイソン博士の気宇壮大なアイディアの1つに「ダイソン球」がある。太陽から放射されるエネルギーの20億分の1しか地球に利用できないので、地球を地球軌道を球殻でおおって、エネルギーを有効利用しようとするものである。しかもこのダイソン球の材料には木星を潰せばよいというものである!!
(ちなみに現在の知的財産権法ではダイソン球を実施できないものの例として権利としての発明は付与できないと解説している)

この例のようにフィクションのSF小説がつまらない論文のように見えてくるほど想像力に満ちた文学的科学論考である。

ダイソン博士の半世自伝「宇宙をかきみだすべきか」は絶版であるが、こちらも興味ある読者は一読を奨めたい。
投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

6人たどれば,世界中のだれとでもつながる 脳はここまで解明された

脳はここまで解明された―内なる宇宙の神秘に挑む
合原 一幸
ウェッジ (2004/02)
売り上げランキング: 106,277
おすすめ度の平均: 3.67
5 科学啓蒙書のひとつである
1 ピグマリオン病
5 脳研究の成果には身近に感じるものもあり、知ることは楽しさもある

6人たどれば,世界中のだれとでもつながる

相原先生のカオス、ニューラルネットワーク、複雑系の研究活動はずいぶん前から知っていたが、本書で相原先生と共同研究者による学際的、冒険的な探求により脳、知能をアナログ回路ネットワークで解明してきた成果が平易に紹介されている。

相原先生たちの脳解読のアプローチは、デジタルコンピュータをベースとしたAI.・人工知能の実現がデジタルなトップダウンのものに対して、脳のニューロンのアナログ電気回路のネットワークの結合というアナログなボトムアップによるものである。

 彼らの研究の原点は50年前のホジキンとハクスレーによるイカの神経の電気回路モデルの発見に遡り、相原先生の師で、近年物故された松本元氏によるヤリイカの人工飼育の成功という地道な努力の上に積み重ねられたものである。成果として、脳生理学者の伊藤先生との研究によって、彼らのモデルが小脳で説明できる事までわかってきた。

 相原先生らの最近のアプローチはスモール・ワールド・ネットワークのモデルへの適用である。スモール・ワールド・ネットワークは様々な現象に成立する法則で、大変興味深いことに、「6人たどれば,世界中のだれとでもつながる」という友達の輪ができるのである。 レビュアーの単純の試算で検証してみても、ひとりの知っている人の数を100人と見積もって、100の6乗は1兆なので、知り合いどうしの重複はあったとしても世界の人口60億より充分に大きいので、ありえる話だと一人納得した次第である。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


| | Comments (4) | TrackBack (2)

富士通・池田敏雄の生と死を知っていますか

日本コンピュータの黎明―富士通・池田敏雄の生と死
田原 総一朗
文芸春秋 (1996/01)
売り上げランキング: 93,300
在庫切れ

富士通・池田敏雄の生と死を知っていますか

社会にPC、インターネットが普及し、一方、コンピュータ技術者もWindowsプログラミグやUNIXの事はよく知っている時代になったが、パソコンマニアも日本のコンピュータ産業史は意外と知らないのではないだろうか。本書は戦後、IBMが巨人として台頭していた時代に日本のコンピュータ産業に礎を築いた富士通の技術者、池田敏雄氏の評伝である。

 戦後、政府は国内産業の育成・発展のため、自動車業界でもコンピュータ業界でも、企業の合弁、協業を図ろうとした。弱小メーカーが分散していては既存の米国のメーカーとは戦っていけないとの判断があったからである。昭和40年代にコンピュータ産業の国策化を担当したのが後に大分県知事となった平松氏である。その平松氏が合弁・協業の相談を持ちかけたのが当時、大型計算機の売上げが販売内訳の主力であった富士通の一取締役であった池田氏であり、池田氏の発言が平松氏の政策案に大きく影響を与えたのであった。
 
 池田氏は数学の天才で、富士通に入社し、人員削減の窮地の経営状態の中で、上司の課長の小林氏の元、アンダーグラウンドで、コンピュータの開発に没頭する。そののめりこみは、寮や合宿所となった社外の個室にこもって、設計回路図を延々と書きつづけ、会社にもでてこないという、異例のものだった。池田氏の書いた設計図を引き継いで形にしていったのが、後に会長となる山本卓真氏である。このような協力者のもと、富士通はリレーを使って計算機の事業化に至るが、巨象のIBMも真空管からトランジスタ、ICと次々と高速デバイスで立ちはだかってくる。富士通もデバイスを高速化していくが、最後にIBMに対抗するためコンピュータのLSI化技術をもったアムダール社と提携を行う。

 池田氏のコンピュータ開発の全速力の人生は、氏の身体に大きな負担をかけていた。アムダール社を空港に迎え、幹部と握手した直後、池田氏はクモ膜下出血で倒れ、51歳の若さで早世してしまうのであった。彼が生きつづけていれば、その後の日本のコンピュータの歴史も変わっていたかもしれない。

 数学・論理の天才の彼が言わしめた言葉は印象に残る。“コンピュータの発展というのは。1つの合理的なかたちで発展を遂げるほど単純なものじゃないんですね…” 

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

ヒトの鏡 サル学の現在 立花隆

サル学の現在
サル学の現在
posted with amazlet at 05.05.19
立花 隆
平凡社 (1991/08)
売り上げランキング: 553,212
通常2~3日以内に発送
おすすめ度の平均: 4.67
5 ヒトの鑑としてのサル
5 さる学の現在
4 サル学ってなんだ!?

ヒトの鏡としてのサル

サル学は日本で生まれ、育った世界に誇る学問である。黎明期は今西錦司氏に遡り、河合雅雄氏を代表とする多くの学者を輩出している。本書はサル学の専門家ではなく、文筆家の立花氏のサル研究者へのインタビューによって、その全貌が見事に、かつわかりやすく説明されている大書である。

サル学を社会人類学との対比で捕らえるならば、社会人類学はヒトが他の動物との違い(インセストタブー、同じ種の殺しあい、モラル)を明確化してきたのに対して、サル学はヒトがいかに他の動物と差のない事を近年、次々と明白にしている。本書を読むとこれまでヒト固有と思われる行動がサルにも見られる例をいくつも見られる。

また、サル学のおもしろさはそのアプローチのサイエンスとしてのアマチュア性にも見られると思う。ボスとその他のサルとの関係(ソシオグラム)、性行為の回数の計測など、まさに人間観察の延長であるため、門外漢も容易に理解できる。

一番興味深いのは何といってもピグミーチンパンジーである。彼らは挨拶、おじきや握手と同じように性行為や愛撫を行う。ヒトの社会では非日常の聖域である性行為を、日常生活で利用する彼らにとって非日常の聖域とは何なのだろうかと考えると興味深い。
投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

ブログの技術 Blog Hacks ―プロが教えるテクニック&ツール100選

Blog Hacks ―プロが教えるテクニック&ツール100選
宮川 達彦 伊藤 直也
オライリー・ジャパン (2004/08/07)
売り上げランキング: 6,584
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 3.6
4 日本発のオライリー本を評価したい
1 プラグインの開発する人には向いていません
5 Blogいじりをする方必読

ブログの技術

オライリー社の本シリーズはソフトウェア、プログラミングなどの専門書のバイブルとして有名である。ほとんど海外の執筆者の翻訳であり、やはりソフトウェア技術は海外のレベルが高い事を暗に露呈もしていた。

オライリー社の本シリーズのHACKものは従来の技術専門書とはいくぶん路線が異なっていて、ソフトウェア技術者一流のユーモア心のあふれた番外編という感がある。

本書はネットで流行しているブログについて、技術の事は知らないユーザーからコーディングできるプログラマーまでを対象としていて、ノウハウ・情報からプログラミングによるブログいじりのテクニックまで網羅した稀有な書籍である。翻訳でなく、日本発で上梓されたブログの技術書として評価したい。

個人的にいささか驚いたのはブログが学会で研究のテーマにもなっていることだ。XMLやWeb Serviceとの関連を鑑みれば、納得できる事ではあるが、世の中(市場)の普及と研究は連動しているというところだろう。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

研究職と市場原理ーご冗談でしょう、ファインマンさん

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉
リチャード P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子
岩波書店 (2000/01)
売り上げランキング: 4,565
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4.86
5 卓越した科学者の楽しい人生
5 読まないと損をする自伝の傑作
5 物理学に生きる者として

好奇心といたずら心の実践がノーベル賞の原点

ファインマン氏の名前は理科系の大学で学んだ方なら、一度は聞いたことのあると思う、海外の教科書の良さを知らしめる「ファインマン物理学」の著者である。本書はファインマンの楽しい自伝エッセイ。

名科学者の才能は、すでに、子供のときからの、好奇心、アイディアとそれを元に実行するいたずら心がに発露されている。レストランでアルバイトをしていても、作業性の効率化のアイディアを実践してみて、自分だけがわかるからくり、ボスは理解できず、しかられたりもするが、性懲りなく、何でもアイディアを実践していく。

若き研究者時代の、プリンストン、原爆開発のロスアラモスなどの伝説的研究所で、物理学に名を残す、パウリ、フェルミ、フォン・ノイマン、オッペンハイマー、ボーアといった重鎮と議論のリアルな描写には理系の読者は興奮をおさえられないだろう。

ファインマンのリベラルな精神は権威に対しても、寡黙だが、したたか、かつユーモラス。相手をぎゃふんといわせる言動に読者も多いに楽しませてくれる。精神病のふりをして、懲役をのがれたり、マンハッタン計画の機密書類のキャビネットを金庫あけの趣味で軽々をあけてしまい、周囲をびっくりさせている。(昨今の企業の情報セキュリティの管理もファインマンにはどんなに甘く見えるだろうか)

タイトルが示すように周りには冗談かと思われるようなアイディアを学問といたずらで実践する事がファインマン氏をノーベル物理学の学者にならしめた所以であることがよくわかる。それ以上にファインマン氏のアイディアを読むだけでもの十分に楽しめるエッセイの一冊である。

さて物理学者など興味ない読者には、本ブログのテーマである市場原理の観点でのエピソードを紹介したい。

米国では大学のポストは成果で契約の延長が判断される実力主義である。ファインマンは研究一筋よりも研究と教育の両立を好んだ。そんな彼のもとにプリンストン高等学術研究所から、彼が望む研究と教育の新しい講座を用意して、ポストのオファー(誘い)が届いた。ファインマンは自分がこんなすごい研究所で成果をだせるのか、成果がでなかったら期待を裏切るのではないかと罪悪感にしばし悩む。

先輩のアドバイスは「大学が教授を雇う時は、大ばくちで、結果が悪ければしかたない。これは君の責任ではない」 これでファインマンはすっきりして、のびのびとオファーを受ける。

50年前の米国の大学の市場原理はかのように研究者の真摯な良心にも関わっていたのである。大学もリスクテイクして人材を雇い、研究者も雇用は期限契約のリスクを覚悟の上で職につくのである。

PS.本書はかつてハードカバーで読んで、再読である。岩波は良書を現代文庫としてきちんと後世の残る事業をしている。市場原理からすれば、薄利であると思うが、その事業の方針の一貫性に敬意を表したい。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。

| | Comments (0) | TrackBack (1)