普段着の住宅術 中村好文

普段着の住宅術
普段着の住宅術
posted with amazlet on 06.05.04
中村 好文
王国社 (2002/04)
売り上げランキング: 33,369
おすすめ度の平均: 4.83
5 やはり10坪は必要か
5 建築が好きになる本
5 ヒヤシンスハウス

美しい普通の生活

現在、住宅建築の達人といえば、文句なく、中村好文氏であろう。カリスマという敬称はふさわしくない。実に、子ども心をもったまま、大人になられた人柄が著作や設計された住宅から伝わってくる。昨今の住宅事情を考えると、建築家に家の設計をお願いすることなど、限られたクライアントのできることと思いこんでいたが、普通に暮らすために、細部にいたって、最大限の気配りを図るこの建築家の思いを読んでいくと、自分の思いを家に具現化してもらうという事が決して、特別な事ではなくて、普通に暮らしをしていくことの延長であることと納得させてくれる。

そう。最大限に、個人的にこだわりをもって、全く、普通に暮らすこと、それはより良く生きようとする方には優先順位の高いことである。趣味を極めことも快適に暮らすことも最後は空間に行きつくと思われる。音楽にせよ、美術にせよ、食べることにせよ、最後はその行為をする人を包み込む箱としての家という空間の問題に帰着する。

かつ、美術品ではなく、使いこんでいく普段使いの道具としての家は、その機能性を追及したところの美しさを常に備えているものだと思う。その一例は、中村氏も大好きなシェーカースタイルの家と道具であり、中村氏が友人の骨董のカリスマ坂田和実氏のために設計した美術館であろう。

中村氏のイラスト満載の本書は、建築の本来備えた暖かさを、まるで、人力飛行機を思い描くがごとく、建築という合理性、機能性、経済性と美しさの稀有なる合致をみせ、読者を至福の誘うのだった。

”無理もなく無駄もなく、必然によって生まれてきた姿と形は、本当に美しく、魅力的だと思うのです”

うなずくばかりである。


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ぼくらの鉱石ラジオ 小林 健二

ぼくらの鉱石ラジオ
ぼくらの鉱石ラジオ
posted with amazlet on 06.03.10
小林 健二
筑摩書房 (1997/09)
売り上げランキング: 88,491
おすすめ度の平均: 4.83
5 悲しきラジオ
5 工作が好きな人々のために。
5 モノづくりの原点

悲しきラジオ

著者の小林健二氏は造形作家である。レビュアーは著者の名を美術雑誌”みずえ”の澁澤龍彦追悼特集で、その異色の作品と共に、名前が記憶に刻まれた。著者の作品は単にレトロなサイエンスアートには留まらない。サイエンスとアートの稀有な蜜月がここにある。

コンピュータのマザーボードのジャンクを継ぎ足して現代アートと称するものは少なくないが、著者の作品の製作は、エンジニアも真似のできない、手業である。工作だけが目的なら、鉱石ラジオのような原始的な電気回路は部品があれば数分で完成してしまうのだが、すべて手作りとなれば話が違う。

著者は、国会図書館に通って往年の電子工作雑誌を調べ、見本もないところに、部品の製作から始めるのである。検波器を鉱石とピンで、そして、エアバリコン、ノブ、初期のラジオの中に見つけられるようなさまざまな手巻きコイル,あげくの果てにはクリスタルイヤホンまで、金属を削って、銅線をまいてと、丹念に作りあげるのである。

ここまで手間のかかったラジオが美しくないわけがない。効率的に工場で量産された消耗品と化してしまったMDコンポと比べると、まるで、ライト兄弟やリンドバーグの飛行機はかくの如き美しき手作り品ではなかったろうかと思いを誘う。

少年が一人、ラジオの検波器を握り、遠く彼方からの電波をさぐるイラストに、なくしたものを見つけた気にさせた。

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ひんなり骨董 菊地 信義

ひんなり骨董
ひんなり骨董
posted with amazlet on 06.02.12
菊地 信義 坂本 真典
平凡社 (2002/06)
売り上げランキング: 411,778
おすすめ度の平均: 5
5 昔なつかし、少年のたからばこ

装丁家菊地信義氏の審美眼

装丁家 菊地信義氏の私的骨董エッセイ。若者を中心として、既存の骨董の価値観にこだわらない、ニューウェーブ骨董が市民権を得る前に、菊地氏は極私的、いわばマイブームとして、物好きが嵩じて、独自の審美眼により古物から、ジャンク、仏像残欠と蝋燭で灯をともすように、その収集を進めてこられた。その成果は前著の「わがまま骨董」で紹介され、同好の士の大きな評価を得ることになった。

本書は、待望の続編にあたり、前著の系統の緊迫感あるモノから少し大人のいぶし銀の華やぎのある物まで、独特の文体で、菊地ワールドをくりひろげていて、ページを繰るのもおしいくらいだ。平凡社の専属写真家の坂本氏によるカバー写真は、美しい緑青の漏斗を花器に見たて、川瀬敏郎氏の作品のように美しい。

菊地氏が蝋燭を灯し、愛すべき物を見つめ、慈しみ、対峙する姿が目に浮かぶ。

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食物採集による自給自足のメニューをご覧あれ カムイの食卓―白土三平の好奇心

カムイの食卓―白土三平の好奇心〈1〉
白土 三平
小学館 (1998/03)
売り上げランキング: 148,088
おすすめ度の平均: 5
5 食物採集による半自給自足のメニューをご覧あれ
5 三平少年が貧しさを味わったのは、自然と別れた時だった
5 まさにカムイの食生活

食物採集による自給自足のメニューをご覧あれ

白土三平氏の漫画は全共闘世代にはバイブルの1つだったと聞く。封建時代の支配階級と虐げられる貧民層、そんな中で忍者カムイの活躍とともに、読者を魅了するのは弱肉強食の自然の描写であったと思う。

その巨匠マンガ家白土三平氏は今や千葉の房総半島の漁村に住み、農業、漁業というよりも狩猟民族のように、まさに自然の恵みの採取の半自給自足の生活を過ごしている。その食物の対象は、都会でも普通の田舎でも手にはいらない、どちらかと言えば、ヒトの食べ物としてはボーダーラインにある、岩にこびりついた貝、きのこ、小魚の類である。

白米が常食になるまでの昔の農村の食生活とはこの程度のものだったのかとも感じる。本書のユニークさはこれらの食物の採取方法から調理までの食生活の実践をビジュアルに写真をふんだんにつかった紹介にもある。

白土さんは東京生まれで太平洋戦争の少年時代は長野の真田の田舎で疎開暮らしをおくった。疎開生活は差別も含め、決して楽しいものではなかったと記述しているが、そこでの食の記憶が白土さんを房総での自給生活に誘ったのであろうと思われる。実際のところ、その理由は何だろうか。

ナチュナル派、エコロジストと称していながら、テレビ番組のレビューを稼業としているのタレント諸氏にも実践してほしいですねぇ。(それも”よいこ浜口”企画としてお笑いネタとして消費されてしまうかな)

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天才花人 川瀬敏郎の四季の花手帖

四季の花手帖 (1)
四季の花手帖 (1)
posted with amazlet at 05.07.29
川瀬 敏郎
平凡社 (2002/04)
売り上げランキング: 103,873
おすすめ度の平均: 5
5 素晴らしい
5 花の一瞬の表情をとらえる

平凡な自然に囲まれた田舎の環境で育った。青春期になれば退屈なだけの場所である。青い鳥の寓話のごとく、ものに近づきすぎると良さが見えないことがある。著名なエッセイストの方は私の田舎をフランスのワインのぶどうの産地のように素敵なところと評価され、移住されてきた。確かに自分でも都会にでて見えてきた故郷の自然の良さというものがある。四季の樹木や草花はマンションのベランダだけでは再現できない。

さて、本書は天才花人川瀬氏がベランダには全面、朝顔をさかせ、旬の季節には野原に野花をつみにいく。そして得意の器やジャンクに生ける。本書は春夏編であるが、秋冬編の雪に生けるのは予想を越えて圧巻だった。

本書を読んで、川瀬氏が最高と評価する蓮が好きになった。偶然にも通勤路のはずれに蓮の咲く池があり、少しだけ遠回りして成長ぶりを観察する。悟りがひらける気になる。四季に恵まれた日本に感謝。

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いつか貴方も見たはずの小屋の肖像

小屋の肖像
小屋の肖像
posted with amazlet at 05.07.23
中里 和人
メディアファクトリー (2000/09)
売り上げランキング: 255,440
おすすめ度の平均: 5
5 わびのトマソン風景

わびのトマソン風景
”老人力”でメジャーになった赤瀬川原平氏をご存知だろうか。温厚・柔和な面立ちからは想像できないが、60年代前衛芸術で活躍し、1万円札の模写の作品が犯罪ではないかと裁判にまで至った経歴のオブジェを見る目利きであり、別名で小説を書いて芥川賞を受賞している。赤瀬川氏は前衛芸術創作活動を極めていくうちに袋小路に入ってしまったと思われる。そして、意図なく、たまたま、実用性を失った日常風景の中のオブジェに前衛芸術の独創性やオリジナリティを越えたモノを見出す。例えば、家屋の入り口にあったドアが不要になって、跡にドアにあがる数段の階段だけが残った。赤瀬川氏はこれを無用の美として”純粋階段”と名づけた。これをきっかけに友人等と路上探偵団を結成し”役立たないものの美”としてトマソンと呼んだ。トマソンは芸術というガチガチ、難解なものでなく、肩から力のぬけたユーモアを帯びたものである。

さて、本書は小屋という現代社会からは姿を消しつつあり風化によってオブジェと化した物体にこだわった中里氏の寡黙であるが強い思いを感じる。

理屈は別にして、自分はこの小屋の肖像を美しいと思う。

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平成の利休 ひとりよがりのものさし

ひとりよがりのものさし
坂田 和実
新潮社 (2003/11)
売り上げランキング: 55,992
おすすめ度の平均: 5
5 平成の千利休デビュー
5 何度も眺めたい本です

平成の利休・ニューウェーブ骨董のカリスマ

秀吉の時代に利休は大陸から渡ってきた日常用品の粗末な茶碗に、日本目でわびの美しさを発見した。明治には柳宋悦(モダンデザイインの柳宋理の父)は明治以前の庶民の生活用品に民芸という美しさを発見した。こういった目利きと財力をもった好事家によって骨董は世代を経て引き継がれてきた。

骨董に限った事ではないが、どんな伝統でも、時代が立つと文化が形骸化してしまい、新鮮さを失いがちである。
(企業も国も同じと思う)その結果、一般人からみたら骨董は価値はわからないけれども、裕福なおじさんたちの道楽という目垢がついてしまった。

橋本治氏が本に記しているように人は「美しさ」がわかるものではなく、「美しい」がわかるのである。坂田さんは既存の骨董界では評価されてこなかった古道具に「美しい」を見る自由な眼をもって、坂田古道具店にやってくるお客さんや読者に「美しい」を教えてくれる。

レビュアーも、さびで赤茶けたトタンの塀や生家の泥の漆喰を美しいと感じるようになった。

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シェーカー―生活と仕事のデザイン

シェーカー―生活と仕事のデザイン
ジューン スプリッグ June Sprigg Michael Freeman 藤門 弘 マイケル フリーマン
平凡社 (1992/11)
売り上げランキング: 316,957
おすすめ度の平均: 5
5 合理主義と宗教が生み出す機能美
5 質素でシンプルでとても素敵

合理主義と宗教が生み出す機能美

シェーカーとは米国で18世紀に発祥したシェカー教徒のコミュニティである。現在は彼等の残した家具・調度品のレプリカがシェカースタイルとして、知られている。シェカー教徒は、男女のそれぞれ独身の集団が自給自足と祈りの中世の修道院のような暮らしを送った。中世は終わり近代化の始まる時代に世俗を離れ、ストイックで簡素な暮らしを営んでいたのだが、そこには中世の修道士たちとは異なる人生観・宗教性が、ユニークな事に近代化と双子のような合理主義をおび、そのライフスタイルの実用目的のシンプル、簡素さが芸術のミニマリズムをも越えるシンプルな機能美を、生活スタイル、家具、住まいに表れ、現代に遺された。

 純芸術性を追及して美しくなるのではなく、生活のための簡潔かつ合理性を追求したストイックな宗教性を帯びた機能そのものが美しさを生み出しているのが極めて興味深い。本写真集の細部をよく観察してその美しさを堪能してほしい。

その代表例は鴨居に脱着できるペグ(=フック)である。箒も服も、そして椅子までがすべてこのペグにかけられて、床には何も置かずに整頓する事ができる。タンスは部屋に組み込まれて、タンスの上や裏にごみがたまることもない。また彼等はアイディア集団であり、独自の集団洗濯システムや配膳、ダストシュートのしくみを作り上げ合理性の高い暮らしを送っていた。

合理主義の美しさを彼等の生活と道具を見て堪能する事ができるとともに、宗教性と合理性の稀なる遭遇が我々のエコロジー社会(という言葉は個人的にはあまり好まないが)の1つのあり方のように示唆を与えてくれる一冊である。

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花の美しさは器で決まる 川瀬敏郎今様花伝書

川瀬敏郎今様花伝書
川瀬敏郎今様花伝書
posted with amazlet at 05.07.02
川瀬 敏郎
新潮社 (2002/03)
売り上げランキング: 25,364
おすすめ度の平均: 4.8
5 生け花の美しさは器で決まる
5 生け花を知らない人にも伝わってくる。
5 素晴らしい

花の美しさは器で決まる
川瀬さんの名前は一般にはインスタントコーヒーのCMで知られているぐらいであろう。実は骨董界の大御所、白州正子さんが若い頃からその才能を見出し「天才花人」と呼んだ才能の持ち主である。

レビュアーは花には人並以上の関心はなかった。まして、華道となるともっと興味もなく、よくわからない世界だった。一方、幼少のころからのモノ好きが嵩じて、骨董・器・古道具好きになった。もっとも骨董など、若輩者には出入りできないお金持ちの道楽の世界と思い、骨董屋のとびらをくぐる勇気は若いころにはなかった。ところが実際のところ真贋を問うまでもない小物は数千円のポケットマネーで手にはいる事を知り、底なしの沼に足をつっこんでしまった。手に入れた器は使われなくては活かされない。食器であれば、食卓で使いこなせるが、古ぼけた器となると、飾っておくしかない。

そこで川瀬さんの本に出会って器と花の美しさの組みあわせの妙味に開眼した。器は空(くう)であり、入れるものをひき立てる。大地の土のような地味な器ほど花をひきたてる。自己主張の強い器は花が負けてしまう。川瀬さんの作品で使う器を通して花の美しさもわかってきた気がする。伝統の長い華道の世界で川瀬さんの活動がどのような評価の位置付けなのか、よく知らないし追求するつもりもないが、天才花人と呼ばれた事には十分納得できる。錆びた水道管に生けられた川瀬さんの花は、野に咲いた状態よりも美しさがひきたたされる。お花の好きな方には器の美しさも知ってほしい美しいエッセイ写真集である。

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もう1つの成功のライフスタイル 森暮らしの家 全スタイル

森暮らしの家 全スタイル
田渕 義雄 高山 幸三
小学館 (2002/04)
売り上げランキング: 70,566
通常2~3日以内に発送
おすすめ度の平均: 5
5 洗練された田舎暮らし
5 ほんとうの自然にひたりながら暮らしたい人に

     洗練された森のライフスタイル

ポストモダン時代の成功の定義はこれまで以上に多様化していくだろう。アメリカンドリームの象徴のようにビバリーヒルズに巨大な豪邸を建てることだけが成功の証ではないと思う。

ポストモダンの到来を待たずして、古くはマルクスの”人間性の疎外”にさかのぼる市場原理の都会暮らしにいきがいを感じることができず、脱サラ農業を始めた方も少なくない。とは言っても田舎生まれの方々は田舎暮らしの不便さ・厳しさと垢抜けなさを重々認識している。

本書は新しい田舎暮らしのライフスタイルを提唱・実践している作家の田淵さんの暮らしが美しい写真とともに紹介された素敵な一冊である。田淵さんはアウトドアライフのベテランであるが、おもちの才能はそれだけではない。理想の美しい家を大工さんと共同で山の上に建て、自ら増築し、シェーカー教徒のように洗練された家具を作り、薪ストーブを装備し、小麦をドイツ製の電動臼でひいてパンを焼いて自給自足の生活をする。森の中の暮しが長くなるにつれて、住まいもどんどんモダンになっていくのが不思議なくらいだ。近代社会の分業化と大量生産品に囲まれた暮らしを乗り越えた自給自足と審美眼の調和の21世紀のライフスタイルの1つがここにある。          田淵さんのライフスタイルのバイブルはナチュラリストの元祖ソローの”ウォールデン 森の生活”である。

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