トゥルーデおばさん 諸星 大二郎
換骨脱胎の実践
諸星大二郎氏の久しぶりの新作は、グリム童話の諸星異聞といった内容。残酷なもう1つのグリム童話の焼きなおしでは全くない。文字通り、諸星氏の手によって、グリム童話が換骨脱胎されて、新しい作品として生まれかわったという表現が似つかわしい。
おもうに、諸星氏がメジャーにならないのは、氏特有のペンタッチとともに、内臓が流れ出ていくような、これは幻想文学であれば特異なことではないのだが、曖昧模糊たる描写とストーリー性にも理由があるように思える。
諸星氏の作品はまさに、どろりとした内臓そのもので、その作品が成り立つためにはフォルムが必要とされる。
デビュー時の暗黒神話にせよ西遊妖猿伝にせよ、オリジナルから全く別の作品として生まれるためにも、諸星氏の作品には本家どりのオリジナルが不可欠なのではないだろうか。
荒俣宏氏の幻想文学評論によると、作者とストーリーのオリジナリティというのは,全くもって近代の幻想であって、
近世以前の物語は、作品のオリジナリティはないと断言でき、すべての伝承・物語が常にそれ以前の物語の本家どりだという。
まさに、諸星氏の著作活動は荒俣氏の理論を支持するにはふさわしい。
そんなことはともかく、せめて諸星氏の作品が、もっと上梓されないかと思うファンの心である。
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