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アメリカの軽さと重さ あるいは実話としてのスティーブンキング 心臓を貫かれて 村上 春樹

心臓を貫かれて〈上〉
マイケル ギルモア Mikal Gilmore 村上 春樹
文藝春秋 (1999/10)
売り上げランキング: 12,326
おすすめ度の平均: 4.67
4 壮絶
5 この世でない世界からの言葉たち
5 安易な回答や感傷を拒絶する

アメリカの軽さと重さ あるいは実話としてのスティーブンキング

本書は、村上氏が在米時に、奥さんが読んでいた本を借りてみたら、衝撃的で、本書を翻訳するまでに至ったという米国史上に名を残す殺人犯ゲイリー・ギルモアの実弟による評伝の翻訳である。

村上氏は本書によって、人生が変わるくらいのインパクトをうけたとの事で、その追体験をすべく、大書ではあるが、読み出すと村上訳にものせられ、いっきに読みこんでしまう。

ソルトレイクという米国の美しい都市が、その表面の姿の裏の汚点として、ギルモアという人物を生みだした地霊であろうと、著者である実弟は、兄のひきおこした惨劇の理由を、その土地と短いながらもそこに住みついた祖先の血脈から原因を導き出そうと、緻密に事実を掘り起こしていく。

実弟マイケルと翻訳者村上氏の努力にもかかわらずといってよいのか、あるいは、それが著者や村上氏の意図するところなのか、ここにあるのはスティーブン・キングの小説でもなければ、殺人事件の理由を明確に浮かび出す評論でも研究でもない。

ただ、重苦しい事実だけがライトなアメリカの重さとして、読後感を引きずる。村上氏のように、読む前と後で人生が変わるという事はなかったのは、幸いかもしれないが、少なくとも、村上氏が初期の作品から、昨今の社会へのコミットメントのスタンスを見ると、村上氏が描きつづけた日常世界の中の闇は、こんなところにも、見つかったという印象が強く残る。

説明によって成立している近代に生きる我々にとって、この理由のない惨劇というものを、どこまで受けとめていけるかということを本書は、そしてゲイリー・ギルモアは、ほくそえんで読者に示している気がする。

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