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唐草物語 澁澤龍彦

唐草物語
唐草物語
posted with amazlet on 06.01.14
澁澤 龍彦
河出書房新社 (1981/01)
売り上げランキング: 598,310
おすすめ度の平均: 4.5
4 鏡の中、幽明のあわいへと引き込まれていく話の風韻が素敵です
5 夢の果実

幻想文学の入門書

幻想文学の泰斗といえば澁澤龍彦氏である。幻想文学とは何かと考えるに、聖と俗、日常と非日常、という文化人類学で定義するような、異界との境界に立ち表れる物語とでもいえようか。オカルトや精神世界とのボーダーラインでもある。レビュアーにとって興味深いのは20世紀の現代思想やその周辺の学問が明らかにしたところのヒトの生きている日常が、根源的には「コトバ」によって構築された、極めて不安定な薄氷の上にリアルな現実社会が成り立っている事を幻想文学は文学という表現によって、示していると思えることにある。

澁澤氏は明治の経済界を作った澁澤榮一の血をうけ、在野の文学者として、マルキド・サドやバタイユといった異端の文学を日本に紹介したのが初期の活動であり、その後、博物学的古今東西の物語、奇譚のエッセイ・研究を
経て、晩年は、評論、研究から凝縮されたエキスを絞りだすように、自ら独自の幻想文学の創作に力を注いだ。

晩年の澁澤氏の幻想文学で一番の好きなのは本書である。函入りで唐草のクロス装丁という、美本であり、古今東西の物語を換骨した、まさに渋澤ワールドの集大成たる短篇集である。レビュアーの好みは平泉の金色堂のたずねた主人公が現地で乗ったタクシーの運転手が藤原清衡であり、現実世界がいつのまにか、幻想の世界に変幻する「金色堂異聞」である。

指輪物語やハリーポッターなどのファンタジー系物語の読者にも、ぜひ幻想文学の世界への誘いとして本書をお薦めしたい。

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Comments

コメント&TBありがとうございました!
何が幻想か、どんなものが幻想文学と呼ばれるのか、
自分の中でのそういうものへの線引きが今イチピンとこなかったので、
とても興味深く拝見しました。
「唐草物語」、その佇まいをも美を醸し出しているようですね。画像がないのが残念。
実物を手に取ってみるのが楽しみになっております!
もしそういう機会がありましたら、ぜひTBさせてくださいませ。

Posted by: ましろ | January 14, 2006 at 02:01 PM

ご丁寧にコメントありがとうございます。私の澁澤体験は、学生時代に始まりますが、当時はすでに桃源社の集成は古本屋の棚を飾り、ビブリオテカ全集が出版されたばかりで、少ない本代から思い切って注文した記憶があります。遺作の高岳親王までリアルタイムで読んでました。当時は幻想文学なる同好の士を未知の書に誘惑してくれるマイナーな雑誌もありましたが、昨今は、幻想文学コーナーも枯れた感があり残念です。ぜひ、初版の現物を味わってください。

Posted by: 管理人 | January 14, 2006 at 08:42 PM

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