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乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない 橋本治

欲望は世界に動かされている

確かにおかしな時代であると思う。天才橋本治氏をして,市場原理を考えなくなってしまった事、自体がそれを象徴していると思う。本書は、橋本氏によると「わからない」という方法、「上司は思いつきでものを言う」に続く三部作にあたるとの事で、一貫して、経済といかに生きていくべきかという論考を、本書でも、橋本氏一流の、結論もわからないまま書き始め、曲芸のような力量で、市場原理に支配された社会をやっぱりどこかおかしいよなと軽妙に話を進める。

書き出しは、貴方は勝ち組、負け組という二項分類という1つの価値観にすぎないものさしを、唯一の価値観にあてはめる社会への異議申立てを、平易は比喩としての、日本史の守護から戦国大名までの、新興価値組との対比で、滑らかに考察する。

そして、誰かがなんとかしてくれるという支配者に依存した国民に、国の主権はあなたたちでしょうと、まっとうな経済循環のヒントを考察する。例によって、橋本氏の著作では誰か偉い先生の言説の引用はなく,一切が自分の言葉で考察しているが、潜在需要を追い求めて、フロンティアの市場を蚕食してしまった結果、欲望が経済を動かすのではなく、欲望はもはや世界に動かされていると、見事に、現代思想でも明らかにしている欲望のキャナライゼーションという見解にまで結論づけている。

橋本氏一流のさらなる考察では、勝ち組、負け組という唯一の価値観から逃れて、生きていくヒントとして、かつて貧乏だった時代には必要に応じてしなければならなかった「我慢」という行動を、現代では「いるかいらないかわからない」欲望を「我慢」することが「現代に抗する力」であると結んでいる。

課題は自分の頭で考えてという一貫したテーゼの元、文末は「後はよろしく」と橋本節は健在である。

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