東京タワー リリー・フランキー
扶桑社 (2005/06/28)
売り上げランキング: 214

感動
いったいこの人は!?
お願い憧憬としての東京タワーと母への想い
リリー・フランキー氏は同世代であり、自分が若いときの糸井重里氏や坂本龍一氏のように、若者の強い支持を得ているイラストレーター本業のサブカルチャのマルチタレントである。本書はりリー氏の母にささげる自伝とでもいえようか。東京タワーはリリー氏には父もそうだったように田舎の若者を吸寄せる都会の象徴であり、自堕落で友人宅を転々とし、ようやくイラストレーターとして自立したリリー氏と田舎から呼び寄せた母との蜜月の象徴であると思う。炭坑の全盛期の終わった筑豊と父方の祖母の小倉を行き来し、貧乏な少年期を過ごす。東京にでたリリー氏は大学も行かず自堕落な生活。それなりに豊かになった日本を同時代として過ごした読者として、この貧困の記述は悲惨さのない明るさに満ちたものではあるが、貧乏がテーマとして成り立たなくなった現代の小説としては稀有であり、奇妙な読後感を持った。それ以上に、リリー氏の愛情が伝わる母への思いが胸をつく。母の入院のお病院の記述は柳美里氏の命シリーズに似たリアルに満ちている。21世紀の小説で東京タワーなどというと泉麻人氏のような都会育ちのレトロのイメージさせるが、なぜか、小説の内容の時代背景の憧憬として妙にはまった題名である。リリー氏が母、父をよぶ、オカン、オトンという方言が余韻として残る。
帯のべた誉めはちょっと似合わない気がする。
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