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遠野物語 これを語りて平地人を戦慄せしめよ

遠野物語―付・遠野物語拾遺
柳田 国男
角川書店 (2004/05)
売り上げランキング: 9,520
おすすめ度の平均: 4.67
5 吉本隆明に霊感を与えた名著
5 伝説
5 「平地人を戦慄せしめよ」

これを語りて平地人を戦慄せしめよ

民俗学は明治時代、農務局官僚の著者が作り出した学問である。研究の対象は、前近代の日本の一般の人々の暮らしである。

例えば、西洋美術史をひもとけば、絵画の被写体はその時代において描くに値するものであった。それがキリストであり、宮廷の皇帝の肖像であった。風景画や街の人々が描写の対象になるのは、近世になってからである。庶民の生活風景など美術家にとっては存在しない如きものであった。

同様の事が民俗学にも言える。柳田氏が目を向けるまでは前近代の庶民の暮らは、学門の対象の価値として認識されない。国家の近代化によって初めて、柳田氏は前近代の日本を客観的に研究の対象として見ることができたのである。
そして柳田氏を中心として国内の民俗研究のネットワークが形成され、民俗学は市民権を得るに至る。

遠野物語は民俗学の黎明期の柳田氏の作品であるが、遠野に伝わる伝承を地元の佐々木氏からインタービューして完成されたもので、内容は学問というよりは平凡な民話の集成である。

”国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。”

一読、平凡な本書の序文の本文は柳田氏の非常民への関心を示すと共に、民俗学の魅惑を凝縮している。この戦慄から民俗学は学問として息吹を得たのだ。

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