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岩井克人氏ライブドア買収を斬る 会社はだれのものか

会社はだれのものか
会社はだれのものか
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岩井 克人
平凡社 (2005/06/25)
売り上げランキング: 127
おすすめ度の平均: 3.27
5 真面目な質の高い本
4 資本の質の変化!?
3 前作のインパクトに比べるといまいち。

株主主権論を論破

前著の「会社はこれからどうなるのか」はお奨めの良書であったが、レビュアーだけでなく世間でも反響は大きかったようで、岩井氏への講演、セミナーがあいついだ。本書は前著の続編として、会社論を平易、根源的かつ現実的に考察している。

冒頭、前著の復習として会社は株主が法人である会社を所有し、法人である会社が従業員や設備やキャッシュの会社資産を所有する二階建て構造論を展開する。その上で、グローバルスタンダードとして跋扈している米国の株主主権論も株主軽視の日本的会社も同じ二階建て構造の上半分と下半分だけをとらえているものであり、米国でも日本的経営の時代があり、日本でも1920,30年代は株主の力が強かったことを主張し、二項分類にありがちな袋小路からの視点の移動を促す。

そして本論のテーマとして岩井氏の提唱してきた”ポスト産業資本主義”の時代では具体的に会社はどうあるべきかの課題を平易に論考する。ポスト産業資本主義の時代では差異だけが利潤をもたらすので、顕著な例として金融経済が会社の買収や金融派生商品を生み出して、世界の経済がずたずたになっていくように世間一般に危惧するところであるが、岩井氏はお金の力が弱くなってきている証拠であると持論を展開する。まさにデリバティブは文字通り金融から派生したおまけのような存在なのである。

そして考察は木村剛氏が得意なCSRに移る。かのフリードマンは会社に社会的責任があるとしたらそれは利益を生み出すことだと述べたという。レビュアーも同感に思っていた。岩井氏はCSRバブルに懸念を示しながら、CSRで肝心なのは、まず会社が何かという主語が欠落したまま、行動の倫理が一人歩きし、世の中の会社はCSRは長期的にお得であるという、まさに”情けは人のためならず”のような、日本人の典型的な公的資格好きのあらわれを見る。

岩井氏の結論としてCSRが重要なのは法人がヒトと同等の人格・権利・義務を有するのであれば、(もちろん現代社会はヒトという種だけが権利をもつのであって、木は法廷にたてないのであるが)、CSRはヒトとしての法人の社会の義務であると結ぶ。つまり法人=会社はヒトなのである。ここでタイトルの答えがでる。

会社は「社会のもの」なのである。

後半は3人の方との対談である。名経営者、小林陽太郎氏との対談は実務とアカディミズムのトップ同士がレベルの高い議論を展開し、興味深かった。新産業創生に尽力される原氏が期待をよせるPUCは既存のWINTELとの違いにはいささか疑問をもった。

名経営者の松下幸之助氏はいみじくも語っていた。”会社は社会の公器”。”起業は人なり”。池田清彦氏は社会は道具であると述べていた。レビュアーはヒトが公の道具として使える会社の早期実現を望みたい。

世の中で会社に係っている人々、全員に読んでほしい最良書である。本書で岩井氏の著作に出会った方は過去に遡って、専門書まで読んでみられる事もお奨めしたい。
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Tracked on October 19, 2005 at 08:11 PM

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