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天気晴朗ナレドモ浪高シ 坂の上の雲 6

坂の上の雲〈6〉
坂の上の雲〈6〉
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司馬 遼太郎
文芸春秋 (1999/02)
売り上げランキング: 1,110
おすすめ度の平均: 5
5 騎兵隊・スパイ・軍楽隊
5 今日露戦争を考える。遠い過去の出来事ではない
5 涙無くして読めない

本日天気晴朗ナレドモ浪高シ

レビュアーはハードカバーで本書を読んだので文庫版と巻の内容に相違があるのはご容赦願いたい。
さて、本作品のクライマックスを紹介して「坂の上の雲」のレビューを完結したい。

旅順艦隊の殲滅と奉天の包囲と優勢な戦況になったが、実は日本の陸軍はギブアップ寸前だった。講和を第三国に依頼するが、条件があわず、戦争は終わらない。

クライマックスはバルチック艦隊の全滅である。海路、停泊地での燃料の補給にも苦労しながらやってきた艦隊を日本海で待っていたのが東郷、その参謀の一人が主人公の秋吉真之である。それまで愚鈍な戦いの連続であった日露戦争の終結は劇的ともいえる秋吉の作戦の成功により、バルチック艦隊を壊滅させ、日露戦争の勝利に至るのである。

日本海にやってくるか、それとも太平洋から津軽に廻るか、秋山は考えすぎての不眠状態、バルチック艦隊の襲来を見て小躍りしたくらいだった。彼は思考力をすべて、この戦いに使ってしまった。そして、智恵に長けた名参謀も勝利は自分の作戦ではなく天の力という宗教がかった神秘主義者となり、児玉源太郎と同じく、戦後まもなく他界するのであった。

明治維新後のわずか30年の間に列強に勝利した、日本軍とその背景としての近代(西洋)化は驚嘆すべきものである。

小説の主人公の2人の兄弟は本作品の日露戦争の記述の中でその活躍が局面でスポットとして語られ、司馬さんが日露戦争を陰の立役者として評価し、世の中に知られるようになる。

本小説は二人の活躍と同時に、司馬さんが古本屋の棚でほこりのかぶっていた、いささか事実を歪曲した日露戦争の公史を膨大なエネルギーをかけてほこりを払うように調べてあげて直し、40歳代の10年をかけて、全て注いだ労作の結果として、日露戦争の真実に近い姿が浮かび上がったのである。

日露戦争の物語で秋山の親友というだけでなぜ子規を登場させたのか。それは定かではないが、一巻のレビューでコメントしたように、文学を選ぶか、軍を選ぶかという選択があたりまえの時代であったのだ。「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」という最後の戦いの際に指令本部に送信した有名な電文である。簡潔・明瞭かつ、行間に戦況の意図がこめられている。まさに子規のめざした近代の写実主義の日本文学としての俳句のように、戦争に必要な実用性をそなえている。これが司馬さんが子規を登場させ、真之との同郷の友という関係以上のことを示したかった理由かもしれない。

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