« 「愚直」論 日本ヒューレット・パッカード 樋口 泰行 | Main | 日露戦争の陰の立役者 坂の上の雲 1 司馬 遼太郎 »

失敗の本質―日本軍の組織論的研究

失敗の本質―日本軍の組織論的研究
戸部 良一
中央公論社 (1991/08)
売り上げランキング: 1,866
このページは在庫状況に応じて更新されますので、購入をお考えの方は定期的にご覧ください。
おすすめ度の平均: 4.59
5 日本的組織の特徴がマイナスに働いた象徴的ケース
5 今も変わらないニッポンの本質
5 少なくとも、戦史として読む本ではない

理念なき国のゆくえ

本書はノモンハン事件から大東亜戦争終戦までの、戦をケーススタディとして、日本軍は何故、負けたのかという命題を歴史家、組織研究者などの学際的なグループによる失敗の研究と題した試みである。
 前半はケーススタディとして、大東亜戦争を中心とした戦局とその場の大本営や現場の指揮官の判断の様子を紹介する。 後半は、後からの理由づけや、さまざまな偶然の要素の絡む勝敗を決する何故まけたかというテーマを分析している。戦史の理解だけでなく、企業・政府など日本の組織一般が陥りやすい失敗の教訓としても、大変に興味深く読めた。

 暗号解析力や物量の差、精神主義などが一般に指摘されている敗因であるが、本書でまとめられた日米の勝敗の分析として次のような対比をまとめている。

日本軍
戦略の目的 不明確
戦略の志向  短期決戦
戦略の策定  帰納的
戦略のオプション 狭い
戦略の技術体系 一点豪華主義
組織の構造  集団主義(人的ネットワーク)
組織の統合   属人的統合(人間関係)
組織の学習  シングル・ループ
組織の評価  動機・プロセス

米軍
戦略の目的  明確
戦略の志向  長期決戦
戦略の策定  演繹的
戦略のオプション 拾い
戦略の技術体系  標準主義
組織の構造   構造主義(システム)
組織の統合   システムによる統合(タスクフォース)
組織の学習  ダブル・ループ
組織の評価  結果

 印象的だったのは日露戦争の勝利の貢献者である海軍参謀、秋草真之の教訓をベースとした海戦要務令が兵器や戦術の変化の中で改訂される事もなく、昭和になっても形骸化した規則となっていた事だった。これは過去の成功経験は常にメンテナンスしていかないと、逆に負の遺産となる事を示している。

企業でも過去に発生した問題とその解決事例がマニュアル化していくと、ボトムアップでは誰もマニュアルから古びた項目をあえて不要と提言はできないであろう。

むすびの中で組織の目的、概念の創出の欠落の大きさを指摘している。これは戦争に限らず日本人が苦手とするものであり、企業や政府にもあてはまると感じる。
 日本がどのような国をめざすのかが、あいまいなままでは、世界をどのようにしていこうかなどというビジョンは描けるかないだろう。国連の常任理事国になる事も単に第2次世界大戦の敗戦国という呪縛から解かれるだけではないか。石橋湛山が唱えた小国主義も1つの国として選択であると思うのだが、いずれにせよ、理念が見えない。

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


|

« 「愚直」論 日本ヒューレット・パッカード 樋口 泰行 | Main | 日露戦争の陰の立役者 坂の上の雲 1 司馬 遼太郎 »

Comments

トラックバック、有難うございます。
この本は私も読んだことがありますが、
数ある太平洋戦争関連の中でも別格ですよね。
良く知っている戦いからあそこまで日米の文化比較をするのは、
他にはあまり例がないようにも思います。

2章や3章のような考察部分も良いですが、
1章のような事例紹介の部分も、
実にシンプルで全体像を掴みやすいので好きですね。

Posted by: 徳本 | June 16, 2005 at 11:45 PM

徳本様

コメントありがとうございます。

近代戦史を知る上でも、よくできた本だと思いますし、日本という組織・社会が見事に現代社会にも投影されていて、ビジネス書としても一読の価値ありと思い、紹介しました。

また、遊びによってください。

Posted by: 管理人 | June 17, 2005 at 08:49 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61482/4581602

Listed below are links to weblogs that reference 失敗の本質―日本軍の組織論的研究:

» ★★★★★「失敗の教訓」日下公人、ワック [本のソムリエ提供「一日一冊:読書日記」]
■今日のコミットあいさつの後に一言付け加えます。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【今日の名著】───────────────────────────────────「失敗の教訓」日下公人、ワック(1998/12)¥1,470→も...... [Read More]

Tracked on September 23, 2005 at 05:23 PM

« 「愚直」論 日本ヒューレット・パッカード 樋口 泰行 | Main | 日露戦争の陰の立役者 坂の上の雲 1 司馬 遼太郎 »