« 「国家」の誕生と「無法な野蛮」の発生 熊から王へ 中沢新一 | Main | 経済問題を最新経済学で平易に解き明かす 経済学的に考える 伊藤元重 »

幻のレコードショップ

Lady Day: The Best of Billie Holiday
Billie Holiday
Columbia/Legacy (2001/10/02)
売り上げランキング: 9,205
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 5
5 ビリー初期の代表作を集大成
5 キング・オブ・ジャズ・シンガー

 幻のレコードショップ

オフシーズンの軽井沢銀座をデッサン画にしたような商店街の裏のパーキングの角に、そのショップを発見した。中古レコードショップである。中古レコードショップ探しを趣味としていると、どこの街でも店の在り処が動物の嗅覚のように身についてくる。(正確には、レコードを聴くのが趣味であって、店を探すのが趣味というわけではないのだが。)ショップに入ると商店街の静けさから一転、学生客で賑わって喧騒感にあふれていた。ショップは学生を客層としており、どこか懐かしく雑然としていた。そして私は中古CDやロックのレコードには目もくれず、店の奥へとJAZZのコーナーへと足を運んだ。BlueNoteがあった。このショップは掘り出しものに間違いない。そしてついに捜し求めていた50年代の10インチ盤の数々を埋もれていたレコード棚の中から発掘した。おそらく今の学生達の興味をひかれずに、長い年月の間、デッドストックとなっていたに違いない。こうして私は幻のレコード店に邂逅したのだった。シュリーマンと比較するほどの歴史的事件ではなく、一個人の人生の1コマとして。

JAZZやレコードに興味のない方に顛末や薀蓄を語るのは気がひけるが、その店はニュージャージー空港から1号線を1時間ほど車で南下したプリンストンの学生街にあった。マニアの心情としてはこんな情報を公開するのも惜しいほどだ。米国に住んでいた時、旅先で時間があればレコードショップを探しまわった。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロスアンジェルス、ニューハンプシャーからラスベガスまで。足をかけて探し回ってわかった教訓は“レコード屋は学生街にある”。レコード店は大学付近を探せ。考えてみるとそれは東京でも同じだ。中古レコード屋や古本屋は高田馬場や御茶ノ水のような学生街に多い事に気づく。これは世界共通の学生サブカルチャだろうか。

10インチレコードは電蓄時代のSPレコードの後に生まれ、LPレコードの誕生とともに姿を消した。マスターテープからおこしたメタルマザーのプレス数が少ないからなのか、盤質の材料がよいのか、理由は諸説あり、薀蓄はキリがないが、とにかくオリジナルレコードファンには音がよいとの定評がある。生々しい鮮度と臨場感。もっともCDのほうがLPより音が良いに決まっていると思われている方々には、これは主観と好みの問題なのでと弁明する他ない。

日本ではあれもこれもほしいものばかりだったが、米国で暮してみて、ショッピングモールにでかけても欲しくてたまらないという物欲がなくなった。洋服も日本ではブランドをアピールして売り出している服も、スーパーの衣類コーナーの値段だ。それはそれで不満のない環境だが、そこには国の歴史の短さに起因するような物足りなさも感じた。そんな中で10インチレコードだけは別物だった。

 日本に戻り、時折、ベランダから青空を眺め、破けそうなジャケットからそっとラグタイムピアノ盤を取り出して、オルトフォンの針を落す。住んでいた米国は50年以上昔だったような錯覚を覚える。

かつて夢を見た事がある。店がある。店に入るとそこには自分の探していたコレクターズアイテムに満ち溢れていた。それは幻ではなかった。貴方にも尋ねたい事がある。心に一軒、幻の店を持っていますか。幻の店は必ず見つかる。
 
PS.一度だけJAZZ評論家の故油井正一先生と同席する機会があった。恥ずかしながら、スキなJAZZ歌手はビリー・ホリディだと打ち明けた。センセイも最初は良くわかなかったよと答えてくれた。

投稿

皆さんのクリックが励みです→人気本・読書blogランキング ありがとうございました。


|

« 「国家」の誕生と「無法な野蛮」の発生 熊から王へ 中沢新一 | Main | 経済問題を最新経済学で平易に解き明かす 経済学的に考える 伊藤元重 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61482/3907898

Listed below are links to weblogs that reference 幻のレコードショップ:

« 「国家」の誕生と「無法な野蛮」の発生 熊から王へ 中沢新一 | Main | 経済問題を最新経済学で平易に解き明かす 経済学的に考える 伊藤元重 »