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「国家」の誕生と「無法な野蛮」の発生 熊から王へ 中沢新一

熊から王へ―カイエ・ソバージュ〈2〉
中沢 新一
講談社 (2002/06)
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「国家」の誕生と「無法な野蛮」の発生

「野蛮」を根元的に内部にはらんだ現代社会。そこでは貧富の格差が極端に大きくなることでテロを引き寄せてしまい、その報復攻撃もまた、もう1つの「野蛮」的行為である。

カイエ・ソバージュ2巻である本書は、世界がなぜ「野蛮」を内在化してしまったかという難問を「国家」の誕生という根源に遡り論考する。

中沢氏は自然との「対称性の思考」を持ったネアンデータル人の調和社会から、自然と「非対称性」を持つように変化した新石器時代の「国家」の成立への変遷を環太平洋のさまざまな神話を鍵に読み解く。

自然との「対称性の思考」を持った古代人は動物とヒトとの平等性(友愛)の感情を持っていた。動物は狩りをする対象であるとともに仲間である。このため、動物からの肉や毛皮の贈り物に対して、動物の解体は丁寧に取り扱い、敬意を込めた儀式によって、魂は自然に返すという行動によって、動物に対する一方的な優位を否定した。

このような社会では首長は権力を持たず、武力ももたず、もめごとには平和的解決の調停を行っていた。


時を経て、首長がまとめていた社会に、冬の祭りの時期だけ、秘密結社やシャーマンや戦士などのリーダーが自然の力=権力の源泉を象徴した精霊の仮面をかぶって「人食い」を演じるようになる。これが国家発生の臨界状態となる。

そして新石器時代になると、異変が起こり、首長と「人食い」が合体して、「王」が誕生し、「国家」が誕生する。そこでは自然との「対称性の思考」は崩壊し、かつては自然がもっていた「権力」を王が手にする事になり、この時点から「野蛮」が発生する。

レビュアーは日常の食事が作法化されているのは動物的行為である飲食を人間の文明としたい人間の理性のなせるわざと思っていたが、中沢氏の指摘するような動物への霊の送り返しの意味もある指摘が新鮮な感動を覚えた。また古代の儀礼が神やアニミズムという表現に留まらない深い意味の解釈に感銘した。

中沢氏はグローバル化した世界が「文明」に対する「野蛮」(テロ)との戦いを呼びかけているが、「野蛮」を生んだのは「文明」たる国家であるという矛盾を指摘している。これを解決するのは、依然として、我々に課せられた難問である。

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