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愛と悦びのある経済社会の考察 中沢新一

愛と経済のロゴス―カイエ・ソバージュ〈3〉
中沢 新一
講談社 (2003/01)
売り上げランキング: 13,821
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4.17
5 資本主義の夢
3 考え方やものの見方は参考になるが・・
5 愛は見返りを求めてはいけないの

愛と経済の結ばれた旧石器時代の豊かな社会を発掘した偉大なる一冊

愛と経済は人間の欲望を通して、結びつけられている。本書は物質的豊かさを実現した現代資本主義経済と失われた人と人(や自然)との愛の豊かさを回復するために、1万年前の旧石器時代に、人類が獲得していた経済と愛が結びついていた思想を、さまざまなテキストを材料にして、愛のある新しい経済学の構築を試みた冒険的試みの偉大な思想書である。

一般読者には現代思想(宗教人類学)など、難解で理解できず、明日の儲けには役立たないものと思われるかもしれない。本書は中沢新一氏が大学の講義録として、「小僧の神様」、宮沢賢治からワグナーのオペラの原典となった北欧神話とさまざまな題材にして、平易に新しい経済学を作り上げる試みであり、現代の資本主義の抱える問題解決のヒントにも満ち溢れて、ぜひ一読を奨めたい。

 中沢氏の説明よりも内容を平易にレビューする事は非常に困難な作業であるが、レビューとしてまとめてみた。

人の(経済)活動は「交換」「贈与」「純粋贈与」の3つシステムに分類できる。「贈与」(マルセル・モース)は市場経済活動よりも古い歴史があり、宗教的儀式的に相手と交流・威圧する行為として用いられた。この一方的威圧を払拭するために「交換」が行われるようになった。この「贈与」と「交換」の間に“商品”が生まれ、贈与によるヒトの想いは消滅し、市場経済の源泉となる。ここまでは、社会人類学では定説化されている概念である。

ここで中沢氏は「純粋贈与」の概念を定義し導入する。「純粋贈与」とは”神”や”人に恵みを与える大地”の象徴である。市場的損得から離れた純粋労働の農耕により。「純粋贈与」から「贈与」へと大地の恵みとしての農作物の“純生産”が行われる。現実の社会では有機農法や里山運動などがこれに相当する。これは人から自然へ、自然から人への愛の伴う無償の行為である

またマルクスが批判する”人格的疎外のない”悦びに満ちた”純粋な労働”によって「純粋贈与」から“資本”が「交換」に与えられる。

このようにして「交換」「贈与」の2つのシステムではヒトの想い(豊かさの実感)の消滅した“商品”による市場経済世界に対し、「純粋贈与」を加えた3つのシステムの相互作用によって、“大地の恵みという人と自然との愛”、“贈与による人と人との愛”が成立する経済の構図が1万年の年月を経て、中沢氏の考察によって現出する。

本書は、まだ中沢氏の思想的考察にとどまるものであるが、真の豊かさを実現する21世紀の社会・経済として具現化する原点の理論としての確かさを強く感じさせる偉大なる一冊である。

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