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二十一世紀の資本主義論

二十一世紀の資本主義論
岩井 克人
筑摩書房 (2000/03)
売り上げランキング: 38,356
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4
4 貨幣とは何か、そのテーマから未来が見えてきます
5 この本は「買い」です
5 知的興奮を誘う一級品としての読み物が満載の必読書


物を買うとはお金を売ること、物を売るとはお金を買うこと

まさに21世紀のグローバル化した経済の羅針盤となる名著である。エコノミスト、経済評論家、実業家の経験論ではなく、現役の第一線の経済学者の泰斗の岩井氏が平易に説いた経済理論が巻頭の50ぺージの書き下ろしで、後半の雑誌掲載エッセイ、考察を見事にまとめている。

どうやって起業していくか思案する人と経済の行く末に不安をもつ人たちは経済学の最先端の専門書などと尻込みしないでぜひ読んでほしい。たった50ページに経済学の歴史とこれからの時代の経済=資本主義の根本原理がわかりやすく書かれている。(レビュアーは学校で経済学は勉強していない) 凡百の現実派エコノミストの予言を何冊も読むよりも、まず本書で基本思想を理解してほしい。

資本主義の原型は古代の貿易のずっと昔から恐慌、不況の繰り返しとマルクスに始まる資本家の搾取と言う批判をあびながらも現実的に、幾世代もの間、大多数の人々に経済活動のツールとして選択されてきた。そのしくみは極めて単純である。「国富論」のアダムスミスの「神のみえざる手」によって、自律的に経済活動が循環するというものである、そこには原則的に中央制御の機構は不要である。IT用語でたとえるならば右からきたパケットを自分のテーブルの判断で左に渡す「ルータ」がネットワーク全体の動きは把握せずとも、インターネットが自律的に稼動していることに似ている。

経済が不況、恐慌の状況化では政策の介入で軌道修正すべきというケインズ経済学派(代表例が歴史のお勉強でならったニューディール政策の成功例と日本の公共事業政策批判)が1つの流派とすると、もう一つは、自由主義(新古典?)経済学の代表のフリードマンは古典のアダムスミスを忠実に信奉し、金融市場での投機に至る自由な経済活動をも擁護した。

著者はここで投機のパラドックスとして再びアダムスミスの古典から美人コンテストの例えを紹介する。
このコンテストは自分が好む美人に投票するのではなく、誰が一位になるかを投票するのである。
そうなると、自分でなく平均的な投票者は誰を投票するかを予想し、皆がそのような行動をとるとどうなるかを予想し、と予想の連鎖が無限に続く。そのコンテスト優勝者は人気のある美人と乖離するであろう。

卑近な例では株・為替の売買の予想とはこのようなものである。チャート式であろうが、金融工学の方程式であろうが、予測が予測にフィードバックをかけるため、エンジニア用語でいうなれば正帰還のかかった異常発振状態になりかねない。

このような考察を経て,著者は資本主義はその原理として投機のパラドックスを自己矛盾として孕んでおり、市場経済で生きていくとは生産者も消費者もヘッジファンドと何ら変わることなき投機者であることを結論する。(まさに市場に参加するとは共同幻想の上に成り立っている仕組みである)

更に前著群でも展開している専門の貨幣論をもちだして、貨幣とはそこで経済活動をする人が信用している予想の連鎖の上に成立していることを、とりあげ、特にグローバル化した世界経済の中、米国外でも商品と売買できるという定義としての”基軸通貨”であるドルのハイパーインフレーションこそが21世紀の世界経済の本質的な難解な課題であることと結んでいる。そしてその解決の可能性としてのグローバル中央銀行について考察している。

レビュアーの付け加えるところはほとんどないが、商品と貨幣の交換という意において商品を買うとはお金を売ることであり、商品を売るとはお金を買うことであるという表現は貨幣の虚構性をうまくついていて興味深いレトリックに感心した。実はお金を稼ぐとはこの共同幻想になりたった紙切れを受け取る、それだけで”リスクを持つという投機行動であり、そのリスクはお金を別のモノと交換するまで解放されない。まさに無限に続くババぬきゲームだなあと実感した

PS.『週刊!木村剛』投稿

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